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塩野義製薬、モジュラーRAG導入で生成AIの正答率を50%から90%に向上

30秒サマリー

  • 製薬業界特有の機密データ制約下で、AIエージェントによる自律的検索システムを構築
  • 技術パートナーのクラスメソッドと協業し、モジュラーRAGと業務知識ベースを組み合わせて精度を大幅改善
  • クロスリージョン推論のガバナンス整備も1カ月で完了し、最新AIモデルの安全活用を実現

何が起きたか

塩野義製薬は、新薬開発現場に蓄積された実験データや法規制準拠の仕様書など、機密性の高い大量の社内文書を対象に生成AIを活用するシステムを構築した。当初、汎用的なRAG(検索拡張生成)を試みたものの、ユーザーの質問意図をシステムが正確に読み取れず、正答率は約50%にとどまっていたという。

同社は技術パートナーのクラスメソッドと協業し、「モジュラーRAG」と呼ばれる手法を導入した。検索機能を「質問分析」「検索計画」「検索実行」「回答生成」の4ステップに分解し、AIエージェントが状況に応じてOpenSearch・ファイル精読・Excelの3ツールを自律的に選択・切り替えながら検索を実行する仕組みだ。情報が不足した場合はキーワードを変更して再検索するループ処理も組み込まれており、この仕組みにより正答率は約90%まで向上したとしている。

あわせて、塩野義製薬固有の専門用語・略語をAI用辞書として整備し、業務フローも学習させた知識ベースを構築。全ステップでこの知識ベースを参照することで、社員と同じ観点で情報を探索できる環境を整えた。また、最新AIモデル利用に伴うデータ越境(クロスリージョン推論)の課題に対しては、許容リスクの閾値設定・監査ログ整備・モニタリング基盤の構築を約1カ月で完了させ、規制業界におけるガバナンスと先端技術活用の両立を図っている。なお、本内容は2026年6月25〜26日開催の「AWS Summit Japan」における同社講演を基に報道されたものである。

原典ハイライト

塩野義製薬の担当者は「守りとはブレーキではなく、いかに適切にコントロールするかというハンドルワークにこそ注力すべき」と述べ、リスクを理由に前進を止めるのではなく「どのような条件を満たせば使えるか」を検証して新たなスキームを作り出す姿勢を強調した。クラスメソッドとの協業で構築されたモニタリング基盤はわずか1カ月で完成したとされる。

出典: ITmedia AI+(報道)

So What?(なぜ重要か)

製薬のような規制・機密制約が厳しい業界でも、モジュラーRAGと業務特化の知識ベースを組み合わせることで、汎用RAGでは届かなかった実用水準(正答率90%)のAI検索が実現できることを示した事例である。「守り=停止」ではなく「守り=ガバナンス設計」と捉え直す考え方は、規制産業全体のAI活用議論に波及する可能性がある。

日本企業への示唆

金融・医療・化学・防衛関連など、データの機密性や法規制が厳しい日本企業にとって、本事例は具体的な実装ロードマップとして参照価値が高い。ポイントは3点:①汎用RAGの限界を早期に見極め、モジュラーRAGへ切り替える判断基準を持つこと、②既存のExcel台帳など現場ナレッジをAIツールとして組み込み「捨てない移行」を設計すること、③クロスリージョン推論などクラウド固有のリスクに対し法務・セキュリティ・IT部門が連携してスキームを先行策定しておくことである。外部パートナーとの「内製に近いアジリティ」での協業モデルも、人材不足が続く国内企業には有効な選択肢となりうる。

背景・経緯

生成AIの企業導入が加速する一方、製薬業界は各国規制当局への準拠義務や臨床データの厳格な管理要件から、AI活用に慎重な姿勢をとりやすい環境にある。塩野義製薬は約1年半にわたりクラスメソッドと協業体制を構築し、規制制約を前提とした独自のAIガバナンスフレームワークを段階的に整備してきたとされる。