30秒サマリー
- 米ロスアラモス国立研究所がNVIDIA Vera CPUを搭載した3基の新スーパーコンピュータを導入予定
- Vera CPUはAIエージェント処理で従来比7倍、モンテカルロシミュレーションで3倍超の性能向上を確認
- 2027年稼働予定の「Mission」「Vision」は国家安全保障・基礎科学の両領域をカバー
何が起きたか
米ロスアラモス国立研究所(LANL)は、HPEおよびNVIDIAと共同で「Mission」「Vision」「Veritas」と名付けた3基のスーパーコンピュータを整備する計画を明らかにした。いずれもNVIDIA Vera CPUとNVIDIA Rubin GPU、NVIDIA Quantum-X800 InfiniBandネットワークを組み合わせたHPE Cray Supercomputing GX5000アーキテクチャを採用する。
MissionにはNVIDIA Vera Rubin GPUノードに加え、2,300基のスタンドアロンNVIDIA Vera CPUが搭載される予定。VeritasはMissionおよびVisionと同時に導入され、約1,150基のスタンドアロンVera CPUを備え、研究所の自主研究開発プログラムを支援しながら、より大規模なシステムへの展開に向けた検証基盤として機能する。
LANLの早期テストでは、NVIDIA Vera CPUがオープンソースのモンテカルロ熱移動シミュレーションツール「Branson」において既存のCrossroads x86スーパーコンピュータ比で3倍超の性能を発揮。AIエージェントワークロード「URSA(Universal Research and Scientific Agent)」では同比7倍の性能向上が確認されている。また、1基のVera CPUは1ソケットx86 CPUと比較してコアあたりメモリ量が4倍以上、ノードあたりメモリ量が6倍以上とされる。
MissionとVisionはいずれも2027年の稼働を予定。MissionはNNSA(核安全保障局)の先進シミュレーション・コンピューティングプログラムにおける第5世代先進技術システムとして、機密性の高い国家安全保障業務を担う。Visionは材料・核科学、エネルギーモデリング、生命医学研究、AIなど基礎科学向けに開放される。
原典ハイライト
NVIDIAの公式ブログによると、LANLはVera CPUがURSAエージェントワークロードでCrossroads比7倍の性能を実証したと発表。Vera CPUの性能優位はカスタムOlympusコア、LPDDR5メモリ、高速オンチップファブリックによるものとされており、今回の3システムはいずれも実際の科学ワークロードを踏まえたハードウェア・ソフトウェアの共同設計(コデザイン)で構築されるという。
出典: NVIDIA Blog(公式ブログ)
So What?(なぜ重要か)
スーパーコンピュータがAIエージェントの実行基盤として本格的に位置付けられた点が重要だ。これまでHPCは大規模シミュレーションの実行装置という位置づけが主だったが、仮説立案・ツール選択・シミュレーション実行・結果分析・次ステップの改善というサイクルをAIエージェントが自律的に回す「エージェント型科学探索」が、国家規模の研究施設で実装段階に入った。CPUアーキテクチャの設計思想もこれに最適化されており、AI×HPCの融合が新局面を迎えたといえる。
日本企業への示唆
日本の研究機関・大学・重工業・製薬企業においても、シミュレーションとAIエージェントを組み合わせた研究加速の検討が急務となる。特に「富岳」後継機の設計議論や民間HPCクラウド活用を検討する段階にある組織は、CPU選定においてAIエージェントワークロードへの適性を評価軸に加えるべきだ。また、LANLのURSAのようなモジュール型AIフレームワークの内製・導入を見据え、HPC運用チームとデータサイエンスチームの連携体制を今から整備しておくことが競争力維持につながる。
背景・経緯
LANLとNVIDIAはGrace CPUの時代から10年以上にわたりCPU開発で深く協業してきた。直近では2024年にNVIDIA GH200 Grace Hopper SuperchipおよびGrace CPU Superchipを搭載したHPE Cray EXスーパーコンピュータ「Venado」がLANLに設置されており、今回の3システムはその後継・補完的な位置付けとなる。URSAはすでにVenadoで稼働中とされ、MissionおよびVisionでも引き続き活用される見込み。

