30秒サマリー
- ソラコムが2025年7月から「After AIの組織」への移行を宣言し、約1年で成果を公表
- 200人規模の組織を小チーム制に再編、コーディングを生成AIがほぼ100%担う体制へ
- 人員削減なしに売上高を伸ばしながら販管費率を6ポイント削減したと説明
何が起きたか
ソラコムは2026年7月2日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、「After AIの組織」への移行から約1年間の成果を公表した。同社CEO玉川憲氏は、AIコードエージェント「Claude Code」の登場を機に、プログラマーの開発力がAIの基盤モデルに吸収され、ソフトウェア開発面では企業間の差別化が難しくなるとの危機感を覚え、2025年7月に組織改革を宣言したと説明した。
具体的な変化として、約200人規模の組織をビジネス単位の小チームに分割し、各チームがAIと協業する体制に移行。開発・営業・顧客対応・マーケティング・コーポレートなど全部門でAIによる業務自動化を進めた。1年間の成果として、コーディングを生成AIがほぼ100%担うようになり、AI活用製品・サービスの開発が進展。人員は削減せずに売上高を拡大しながら、販管費率を6ポイント削減したとしている。
同社はAI活用の段階を「After AI成熟度モデル」として5段階に整理しており、個人利用(レベル1)からデータ基盤連携(レベル2)、タスク自動化(レベル3)、業務プロセスのAI自律化(レベル4)、人とAIの協業による複利的改善(レベル5)で構成される。玉川氏はこのモデルと、マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏が提唱する「トークン資本」概念との共通性も指摘。人とAIのLearning Loopを繰り返すことで企業のAI資産が競争力となり、人的資本の価値も高まると述べた。
また同会見では、ITの専門知識がなくてもIoTを活用した業務自動化や現場改善が可能なマネージドAIエージェントサービス「SORACOM Agent」のTechnology Preview(β版)提供開始も発表した。
原典ハイライト
玉川CEO「重要なのは人は減らしていないこと。売上高を伸ばしつつAIで生産性を高めた」。コーディングを生成AIがほぼ100%担い、販管費率を6ポイント削減したと公表。組織は小チーム制に再編し、人とAIのLearning Loopが競争力の源泉になるとした。
出典: ITmedia AI+(報道)
So What?(なぜ重要か)
ソラコムの事例は「AI導入=人員削減」という図式とは異なる経営判断を示す。人を維持しながら生産性を向上させ収益構造を改善できることを具体的な数値で示した点で、AI時代の組織変革モデルとして参照価値が高い。また「トークン資本」の概念は、AIを使いこなす組織能力そのものが新たな競争優位になることを示唆しており、従来の人的資本論を拡張するフレームとして注目に値する。
日本企業への示唆
日本企業が参考にすべき点は主に3つある。第一に、大組織をAI活用の小チームに再編する「構造改革先行」のアプローチ。第二に、販管費率改善という財務指標でAI投資効果を可視化・説明する経営コミュニケーションの手法。第三に、「After AI成熟度モデル」のような自社基準のロードマップを策定し、現在地を客観評価することの重要性。同社は現在多くの企業がレベル2(データ基盤)段階にあると指摘しており、レベル3以上への移行計画を持てているかが問われる局面に入っている。
背景・経緯
ソラコムはIoT通信プラットフォームを提供するスタートアップとして創業し、上場後もグローバル展開を続けている。玉川氏は2025年7月、AIコードエージェントの台頭を受けてソフトウェア開発力による差別化が困難になるとの認識のもと、「会社創業の日に生成AIがあったとしたらどんな組織にするか」を起点とした組織変革を社内宣言した。2026年7月7日開催のユーザーイベント「SORACOM Discovery 2026」に合わせ、今回の成果発表と新サービス発表が行われた。





