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日立「不足はCOBOL人材でなく業務を知る人材」——AI時代のレガシー刷新で人の役割が増大

30秒サマリー

  • 大企業の74%がレガシーシステムを抱える中、日立はAIを活用した刷新サービスを展開
  • AIはコード解読や設計書復元を支援するが、業務とITのマッピングや設計判断は人間が担う
  • 求められるのはCOBOL技術者ではなく、全体設計力と業務への深い理解を持つ人材

何が起きたか

経済産業省が2025年5月に公開した報告書によると、レガシーシステムを保有するユーザー企業は全体の61%、大企業に限ると74%に上る。刷新が進まない主因はシステムのブラックボックス化であり、開発時の事情を知る人材が減少したことが背景にある。

日立製作所は生成AIを活用し、ソースコードから設計書を復元する「設計書リバース」を実用段階に引き上げた。また、COBOLからJavaへの変換をPoC(約1000ステップのバッチ処理が対象)で検証し、「設計書の生成→コード変換→テスト生成・実行」の3フェーズで進めるアプローチを採用している。コードを直接変換せず設計書を経由するのは、変換精度の向上と将来の「再レガシー化」防止が目的だという。さらに2025年10月には、退職した保守担当者の業務をAIエージェントに移植しつつ、システム基盤をAPIで疎結合化する「モダナイゼーション powered by Lumada」の提供を開始した。

一方で同社は、AIが担えない領域として三つを挙げる。第一に、業務とシステムを1対1で対応付けて全体構造を把握する「業務とITのマッピング」、第二に、一見不自然な仕様の背景にある「設計意図の解釈」、第三に、システム全体を見渡して非機能要件まで設計する「アーキテクチャ設計力」だ。同社の後藤恵美氏は「足りないのはCOBOL人材ではなく、現行システムがなぜそうなっているかを知る人材」と指摘し、単なるコード変換では根本的なリスクは解消されないと強調する。

原典ハイライト

日立製作所の後藤恵美氏は「足りないのはCOBOL人材ではなく、現行システムがなぜそうなっているのか、業務がどうなっているのかを知る人材」と語り、単純なコード変換だけではリスクが残ると警告。三部良太氏は「AIやツールが進化しても、全体を見渡して設計する力、本番を見据えて何が必要かを見極める力はさらに大切になる」と述べた。

出典: ITmedia AI+(報道)

So What?(なぜ重要か)

生成AIはレガシーシステムの「解読コスト」を大幅に下げる一方、システム全体の責任を担う設計判断や業務上の意図の解釈は依然として人間の仕事だ。AI導入によって「人が不要になる」のではなく、「より高度な判断を求められる人材」の価値が高まる構造が鮮明になっている。レガシー刷新の成否は、技術的な変換率よりも「なぜそう作ったか」を理解し、将来の業務変化に耐える設計を下せる人材がいるかどうかに左右される。

日本企業への示唆

レガシー刷新を検討する日本企業はまず、COBOL技術者の確保より「業務とシステムを横断的に理解できる人材」の棚卸しを優先すべきだ。AIによるコード解析やエージェント活用で時間的余裕を生み出せる可能性はあるが、最終的な刷新方針(機能の統合・廃止・継続)は経営判断が必要であり、CIOや事業部門の責任者が早期から関与する体制が不可欠となる。また、アーキテクト人材やプロジェクトマネジャーの育成・内製化を怠ると、AIツールを導入しても「再レガシー化」のリスクが残る点に留意が必要だ。

背景・経緯

経産省が提唱した「2025年の崖」問題は期限を過ぎてもなお未解決であり、大企業の約4分の3がレガシーシステムを抱えたままだ。日本特有の課題として、IT人材がユーザー企業よりもベンダー側に偏在し、長年の外部委託と個別最適な改修が積み重なった結果、システムが「スパゲッティ状態」化している。日立はこうした背景を踏まえ、生成AIと人間の役割分担を明確にしながらモダナイゼーション事業を拡充している。