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ユナイテッドアローズ、現場の定性知見をAI化する独自エージェント「SMART」を約4カ月で開発

30秒サマリー

  • アパレル大手ユナイテッドアローズがAWSと共同でAIエージェント「SMART」を開発、現場スタッフの気付きをデータ化する
  • 週報作成に2〜3時間かかっていた現場負担を軽減し、4店舗でのPoCでは複数項目で8割以上が有用性を評価
  • 生成AIとAWSの支援プログラムを活用し、企画から検証完了まで約4カ月という社内異例の開発スピードを実現

何が起きたか

ユナイテッドアローズ(グループ273店舗)は、アマゾン ウェブ サービス ジャパンと共同で、店舗スタッフの定性的な気付きをAIで整理・データ化するAIエージェント「SMART(Store Manager Agent for Retail Tech)」を開発した。開発期間は2025年12月から2026年3月末までの約4カ月で、同社情報システム部門の加藤大輔氏が2026年6月開催のAWS Summit Japanで詳細を公開した。

SMARTは主に3機能で構成される。「Daily Survey」はノーコードで作成した日報フォーマットへ音声・テキストで回答できる入力機能、「AI Chat」はスタッフの回答をもとにAIが追加質問で内容を深掘りする対話機能、「Daily Insights」は閉店後の入力内容を夜間の売上データと照合し翌朝に店舗責任者・本部へインサイトとして届ける機能だ。技術基盤にはAmazon TranscribeとAmazon Bedrock AgentCoreを採用している。

4店舗・2週間のPoCでは、「曖昧な表現を具体化する質問をしてくれる」「事実・考察・改善案として整理してフィードバックしてくれる」などの複数項目で8割以上のスタッフが「当てはまる」と回答。教育面でも「AIとの対話を通じてスタッフが自ら考え改善につなげる習慣が生まれた」という予期せぬ効果が確認された。来店ピークを踏まえた人員配置の最適化や、本部の現場ヒアリング時間の削減にもつながったと報告されている。

PoC後は週報レポートの自動生成機能と売上・来店客数を確認できる「Daily Insights」の機能拡充を内製で開発中であり、本格展開に向けた検討を進めている段階だという。

原典ハイライト

加藤氏は「当社では異例のスピードでした」と4カ月での開発を振り返り、「IT部門はシステムを作るだけでなく、現場と協創しながら変革を推進していくことが重要だと改めて気付いた」と述べた。また参考事例として、CoachやKate Spadeを展開するTapestryが同様のAI活用で1年間に約3万件の現場フィードバックを収集しマーチャンダイジング改善につなげたことが共同開発の背景として紹介されている。

出典: ITmedia AI+(報道)

So What?(なぜ重要か)

「売れた理由が分からない」という小売業共通の課題は、現場の定性データが週報という低頻度・低精度のチャネルに依存してきたことに起因する。SMARTが示すのは、AIを「報告書を書くツール」ではなく「対話によって暗黙知を構造化するチャネル」として機能させるアプローチだ。売上などの定量データと現場の定性知見を自動で紐付けることで、これまで経営判断に活用されなかった情報が意思決定のインプットになる可能性を示した。

日本企業への示唆

多店舗展開の小売・サービス業において、現場知見のデータ化は商品企画・販促・人材育成すべてに波及しうる。本事例が示す実務的な示唆は3点ある。第一に、AWSのプロトタイピング支援などベンダーの協創プログラムを使えば、高度な内製開発チームがなくても4カ月規模の検証が可能になった点。第二に、音声入力対応がITリテラシー格差の高い現場スタッフへの導入障壁を下げる有効策であること。第三に、PoCを最小店舗数・短期間で設計し経営層への説明責任を果たしてから本格展開に進む段階的アプローチが、社内合意形成の現実解であることだ。自社に同種の「現場知見の埋没」課題があるなら、週報・日報フローの棚卸しから始めることが優先アクションになる。

背景・経緯

ユナイテッドアローズはグループで273店舗を展開する国内アパレル大手。従来、店舗から本部への情報共有は週報が中心だったが、作成に2〜3時間を要し、記載内容の粒度は担当者によってばらつきが大きかった。IT部門側も企画からPoCまでに時間がかかり、小規模な試作検証を素早く回せる体制が整っていなかったことが課題として認識されていた。今回はAWSの「AWS Prototyping Program」およびAI駆動開発ツール「Kiro」を活用することで開発プロセスを加速した。