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AWSがマルチテナント対応AIチャット基盤の実装アーキテクチャを公式ブログで解説

30秒サマリー

  • Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseを活用したマルチテナント型文書チャットの設計手法をAWSが公開
  • テナント間のデータ分離をCognitoのJWT検証とメタデータフィルタで実現する構成を詳説
  • IngestionからRAG検索まで自前インフラ不要で構築できる参照実装リポジトリも提供

何が起きたか

AWSは公式機械学習ブログで、Amazon Bedrock Managed Knowledge Baseを用いたマルチテナント対応エージェント型ドキュメントチャットアプリケーションのアーキテクチャを詳述した記事を公開した。

紹介されたソリューションは、ユーザーがアップロードした契約書・報告書・製品マニュアルなどに対して即座に質問できる仕組みを、複数ユーザーのデータを安全に分離した状態で提供する。コアとなるデータ隔離の仕組みとして、Amazon CognitoのJWT(JSON Web Token)を用いてサーバー側でユーザーIDを検証・抽出し、その値をドキュメントのメタデータ属性(user_id)として付与する。検索時も同様に、クライアントからの入力値ではなく検証済みJWTから構築したフィルタ条件をAgenticRetrieveStream APIに渡すことで、ユーザーは自身のドキュメントのみを参照できる設計となっている。

アーキテクチャを構成する主なAWSサービスは、Amazon Bedrock Managed Knowledge Base(インジェスト・埋め込み・検索の管理)、Amazon API GatewayとAWS Lambda(エンドポイント処理)、Amazon Cognito(認証)、Amazon SQS(アップロードとインジェストの非同期分離)、Amazon DynamoDB(インデックス状態追跡)、Amazon S3(大容量ファイルの一時保管)の組み合わせ。ドキュメントのインジェストはカスタムコネクタ経由のIngestKnowledgeBaseDocuments APIを使い、6MB以下はインライン送信、最大50MBのファイルはS3経由で取り込む二段階の経路を採る。

インデックス処理は非同期で進み、STARTING→PENDING→IN_PROGRESS→TEXT_INDEXED→INDEXEDの5段階で管理される。ブログ内のテスト結果(小規模ドキュメント・アイドル状態のKnowledge Baseでの参考値)によると、プレーンテキストは2〜3秒でINDEXEDに到達するが、PDFはTEXT_INDEXEDまで5〜30秒、完全なINDEXEDには約90秒かかると記載されている。AWSはこれらを設計上の目安値であり、サービスレベルの保証ではないと明示している。

原典ハイライト

「エージェント型検索ではAIが質問を複数のサブクエリに分解して多段検索(multi-hop retrieval)を行うが、そのすべてのホップでテナントフィルタが適用される。フィルタ値はクライアントから送信された値ではなく、検証済みのサーバー側JWTから構築する」——これがデータ分離の核心的な設計原則として強調されている。

出典: AWS Machine Learning Blog(公式ブログ)

So What?(なぜ重要か)

生成AIを用いた企業向け文書チャットの最大の技術的難所は「誰のデータを検索するか」を確実に制御するアイデンティティ連携にある。このブログが示す設計は、検索時のフィルタをクライアント任せにせずサーバー側の認証済みIDから生成するという原則を、実動可能な構成として明示している点に価値がある。インフラ管理をマネージドサービスに委ねながら、セキュリティの責任境界を明確に保てることを示しており、「セキュアなRAG基盤をどう設計するか」という問いに対する具体的な答えとなっている。

日本企業への示唆

社内ポータルや契約管理、サポート業務など複数ユーザー・複数部門が同一AI基盤を共用する形態を検討している日本企業にとって、このアーキテクチャは実装の出発点として参照価値が高い。特に留意すべき点は三つ。①テナント分離の実装をアプリケーション層に持たせるのではなく、認証基盤(Cognito等)と検索フィルタを直結させる設計を採ること。②インジェストの非同期性を前提にUXを設計し、ステータス管理(DynamoDB活用など)を組み込むこと。③PDFのマルチモーダル処理には数十秒〜約90秒の遅延が生じる点を業務フローに織り込むこと。AWSが参照実装リポジトリを公開しているため、自社アカウントでの検証コストも低く、PoC段階からこの設計思想を採用することを検討に値する。

背景・経緯

マルチテナントのRAG(検索拡張生成)基盤は、ベクトルストアの分離戦略やメタデータフィルタリングの信頼性をめぐって実装の複雑度が高いとされてきた。Amazon Bedrock Knowledge Basesはインジェスト・埋め込み・検索インフラをマネージドで提供するサービスであり、今回のブログはその上にマルチテナント設計を重ねる実装パターンを体系的に整理したものと位置づけられる。ブログの公開日は2026年9月1日と原文取得メタデータに記載されている。