30秒サマリー
- SalesforceがNVIDIA Nemotron 3 Superを基盤とした初のCRM特化推論モデル「Koa」を発表
- 約30年分のCRM導入データを活用した合成データセットで独自ファインチューニング、顧客データは一切不使用
- 社内Slackでの先行稼働を経て10月から顧客パイロット開始、2026年冬にUS地域で一般提供予定
何が起きたか
NVIDIAのジェンセン・ファン最高経営責任者は、Salesforceの年次イベント「Dreamforce」に登壇し、SalesforceのマークベニオフCEOとともに、Salesforce初のCRM推論モデル「Koa」の発表を行った。Koaは、NVIDIAのオープンモデル「Nemotron 3 Super」をベースに、Salesforceがおよそ30年分のエンタープライズCRM展開から生成した独自合成データセットを用いてファインチューニングすることで構築された。
Salesforceはモデルの重みを自社管理し、推論も自社インフラ上で完結させており、トレーニング・推論のいずれにも顧客データは使用されていないとSalesforceのロハン・クマール氏が明言した。Koaのトレーニングにはの製造・金融・医療・旅行など14業種以上をカバーする合成シナリオが用いられ、NVIDIAのNeMo RL、NeMo Gym、NeMo AutoModelを活用した教師あり微調整および強化学習で開発された。
Salesforceが設定したCRMベンチマーク「CRM Bench」では、商談更新・ケース振り分け・フォローアップ予約などの実務タスクにおいて、Koaは主要モデルと同等以上の性能を発揮しつつエラーを3分の1に削減したとしている。現時点ではSalesforce社内のSlack上で従業員向けエージェントとして稼働しており、10月からFormula 1、UChicago Medicine、Baxter Credit Unionなど複数組織でのカスタマーパイロットに移行する。米国リージョンでの一般提供は2026年冬を予定している。
原典ハイライト
NVIDIAのオープンモデルを活用することでSalesforceはモデルをすべて自社インフラ内でファインチューニング・運用できており、「顧客データは1バイトも使用していない」(クマール氏)という点がデータ主権の観点で強調されている。またファン氏はオープンモデルの採用比率が前年初頭の30%から現在70%まで上昇したと述べ、企業が独自AIを構築する潮流を指摘した。
出典: NVIDIA Blog(公式ブログ)
So What?(なぜ重要か)
SalesforceがCRM特化の推論モデルを自社インフラで内製・管理できるようになったことは、AIエージェントによる営業・顧客対応業務の自動化が実用フェーズに入りつつあることを示す。顧客データを学習に使わない設計はプライバシー規制が厳しい業界でも導入障壁を下げる可能性があり、CRM領域のAI競争が「汎用LLMの利用」から「業務特化モデルの自社管理」へと重心を移しつつあることを示唆する。
日本企業への示唆
Salesforceを基幹CRMとして使う日本企業は、2026年冬の一般提供後にAgentforce上でKoaを選択できるようになるとみられる。自社の顧客データが学習に使われない設計は、個人情報保護法や業界規制への対応を考える担当者にとって導入検討の入り口になりうる。一方で、14業種の合成データは現時点で日本語・日本市場特有の業務フローをどこまでカバーするかは原文では明言されておらず、パイロット段階での検証が必要だ。また、オープンモデルを自社インフラで運用するアプローチ自体は、SalesforceのCRM以外の領域でも参考になる戦略であり、自社業務データを使った専用モデル構築の検討を促す事例となっている。
背景・経緯
Nemotron 3 SuperはNVIDIAが公開しているオープンモデルであり、その開放性があったからこそSalesforceが独自のファインチューニングと自社インフラ上での運用を実現できた、とファン氏は説明している。NVIDIAはSalesforceの顧客でもあり、現在Agentforceを顧客サポートワークフローでパイロット中だと原文は述べている。




