公開:2026年10月24日, 最終更新:2026年10月24日
リレーショナルファウンデーションモデル(Relational Foundation Model, RFM)は、主キー・外部キーで結ばれた複数テーブルからなるリレーショナルデータベース(RDB)を直接処理し、手作業の特徴量エンジニアリングやテーブルの単一化なしに予測タスクを実行する事前学習済みAI基盤モデルである。チャーン予測・需要予測・不正検知といった企業が日常的に扱う構造化データ予測を、再学習不要で広くカバーできる点が大きな特徴だ。
概要
従来の機械学習では、RDB上の予測タスクを解くために複数テーブルを結合して一枚の平坦なテーブルに変換し、大量の特徴量を手作業で生成してから個別モデルを学習させる必要があった。スタンフォード大学のJure Leskovec教授らの研究(Relational Deep Learning, ICML 2024 / RelBench, NeurIPS 2024)やKumo.AIによる実測では、熟練データサイエンティストでも1タスクあたり平均12.3時間・約878行のコードを要していたことが示されている。RFMはこのパイプライン全体を置き換え、RDBの構造をそのまま入力として受け取り予測を返す汎用基盤モデルとして位置づけられる。代表的な実装としてKumo.AIが提唱する「KumoRFM」および「KumoRFM-2」がある。
仕組み・ポイント
異種グラフとしてのRDB表現
RDB内の各レコード(行)をノード、主キー・外部キーの参照関係をエッジとして捉え、時系列を含む異種グラフ(Temporal Heterogeneous Graph)としてデータベース全体をモデル化する。これによりテーブルの結合操作を明示的に行わずに複数テーブル間の関係を学習に組み込める。
スキーマ非依存設計
テーブル名やカラム名に依存せず、データベース構造や属性情報(数値・テキスト等)を汎用的にエンコードする。異なる企業・業種のRDBに対しても同一モデルを適用できる。
Relational Graph Transformer
行・列・テーブル間を横断してアテンションを計算するRelational Graph Transformerアーキテクチャを採用し、複雑なリレーショナル構造上での表現学習を実現している。
ゼロショット/インコンテキスト学習
事前学習済みの重みを用いることで、未知のデータベースや新たな予測タスクに対して再学習なしに推論(Zero-Shot / Few-Shot / In-Context Learning)が可能。
評価基準
性能評価にはNeurIPS 2024で発表されたベンチマーク「RelBench」やSALTが用いられている。また、単一テーブルのみを扱うTabular Foundation Model(TabPFNなど)とは適用範囲・アーキテクチャが異なる別カテゴリとして区別される。
なぜ今注目されているのか
2026年4月に発表されたKumoRFM-2では、合成リレーショナルデータ(PluRel等)を用いた大規模事前学習により十億行クラスの巨大RDBへの対応が実現した。41のベンチマークタスク(15データベース)において、従来型のGBDT(XGBoost・LightGBMなど)やタスク特化型の教師あり深層学習モデルの精度を最大8%上回る結果が示されており、学術的な実証が商用スケールへと展開し始めている段階にある。インフラ面でもNVIDIAのGPUネイティブ構造化データライブラリやNVIDIA NIMとしての配信、Snowflakeなどクラウドデータウェアハウスへの統合が進んでおり、実業務への組み込みに向けた環境整備が加速している。
日本企業への示唆
日本企業の多くはERPや基幹システム上に大量のリレーショナルデータを保有しているが、データサイエンティスト不足や特徴量エンジニアリングの工数を理由にAI活用が進みにくい状況にある。RFMはこのボトルネックを直接解消しうる技術であり、需要予測・顧客離反防止・与信審査といった頻出ユースケースで導入ハードルを大幅に下げる可能性がある。一方でスキーマ設計の品質やデータの整合性がモデルの予測精度に直結するため、既存RDBのデータガバナンス整備が前提条件となる点には留意が必要だ。また、NVIDIAやSnowflakeとの統合が進む現状を踏まえると、自社クラウドデータ基盤の選定がRFM活用の可否に影響する局面も生じてくるだろう。
※ 本ページはAI News JAPAN編集部が最新の動向を踏まえて解説したものです。内容は随時見直します。


