公開:2026年9月18日, 最終更新:2026年9月18日
30秒サマリー
- Cooleyは「GO Public」でIPO準備の初期分析をAIが担い、弁護士の判断業務に集中できる体制を構築
- 2025年に180件・総額515億ドル超のディールを手がけた同事務所がChatGPT Workを基盤に専有エージェントを開発
- 定型・情報整理作業を自動化することで「スピードとクオリティの両立」を実現、資本市場業務全体への展開も視野
何が起きたか
国際法律事務所のCooley(本部:米国)は、IPO業務に特化した専有AIシステム「GO Public」をChatGPT Workを基盤に開発した。同事務所のOpenAI公式ブログへの事例掲載は2026年9月17日付。原文によれば、Cooleyは2025年に世界180件、総額515億ドル超のディールに関与し、過去20年超にわたって米国のIPO市場でベンチャー支援型案件の実績首位としての地位を維持しているとされる。
GO Publicの特徴は、エージェントが自動処理できるステップ・弁護士のレビューや承認が必要なステップ・全体のまとめ方を規定した「エージェントハーネス」にある。導入以前は類似企業の先例書類を起点に案件ごとの修正を行っていたが、同システムではクライアント提供情報・関連公開情報・精選された先例を組み合わせた「クライアント固有の出発点」を自動生成できるという。
CooleyのChief Innovation OfficerであるDavid Wang氏は「大量の情報を最初に仕分けした後、人間の専門性を最も価値の高い領域に集中させられる」と説明。資本市場グループのDave Peinsipp共同会長は「早期に質の高い出発点に到達することで、弁護士がIPOの本質的な判断や戦略的思考に時間を割ける」と述べている。同社はOpenAIと緊密に協力してシステムを構築したとされる。
なお、同日付でOpenAIは「Astra for Law」と題した別の発表も行っており、GO Publicの事例はその関連記事として位置づけられているとみられる。
原典ハイライト
Cooley CIOのWang氏は「ChatGPT Workは、かつて手作業で整理していた膨大な情報に知性をもたらし、人間の努力と専門性を高付加価値領域に集中させる」と述べた。Peinsipp氏は「GO Publicは資本市場業務の将来像であり、IPOにとどまらず資本市場取引全般に大きな可能性を見出している」とコメントしている。
出典: OpenAI News/Research(公式ブログ)
So What?(なぜ重要か)
本事例が示すのは、高度な専門職における「AIと人間の役割分担の構造化」が実用段階に入ったという事実だ。定型分析・情報統合をAIに委ね、弁護士の判断・戦略立案・クライアント対応に人的資源を集中させるモデルは、法律事務所に限らず会計・コンサルティング・投資銀行業務にも転用可能な設計思想を持つ。AIを単なる補助ツールではなく「管理された自律エージェント」として業務フローに組み込む実装手法として注目される。
日本企業への示唆
日本企業や法律事務所が得るべき示唆は三点ある。第一に、AIを「全自動」でも「補助ツール」でもなく、人間の承認ゲートを組み込んだ段階的ワークフローとして設計する点が肝要だ。第二に、自社固有の専門知識(先例・ノウハウ・判断基準)をシステムに「焼き込む」ことが競合優位の源泉になる。日本でもIPO・M&A・コンプライアンス対応といった情報量の多い業務が同様の設計で効率化できる可能性がある。第三に、クライアント向け付加価値の軸が「作業量」から「判断の質と速さ」へシフトするため、専門職ファームはサービス設計とフィー体系の見直しを早急に検討すべき局面といえる。
背景・経緯
CooleyはシリコンバレーのスタートアップやVC支援型企業のIPOを長年手がけてきた事務所として知られる。原文によれば、過去20年超にわたりベンチャー支援型IPOの助言件数で業界首位を維持している。同事例はOpenAIが「Astra for Law」を発表した同日(2026年9月17日)に公開されており、法律業界向けAI展開の一環として位置づけられているとみられる。ChatGPT Workが法律事務所の基幹業務に組み込まれた具体的事例として公開された。





