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米企業が使うAIの58%は中国製モデル——見えない浸透の実態と安全保障上の論点

30秒サマリー

  • OpenRouter経由で米企業が処理するトークンの58%を中国発モデルが占め、1年で2倍超に拡大
  • Airbnb・DoorDash・Coinbaseなど大手米企業が中国モデルを業務システムの裏側に採用
  • 「どの国のモデルか」より「誰がどこで動かすか」がデータ安全性の本質——米議会も調査に着手

何が起きたか

AIモデルの中継サービスOpenRouterの統計によれば、2026年6月最終週時点で中国モデルがトラフィック全体の48%を占めた。1年前の20%から2倍以上に増加し、逆に米国モデルは74%から32%へ落ち込んだ。米企業に限定すると、中国モデルが処理したトークンの比率は7月に過去最高の58%を記録、第1週には一時63%に達した(The Kobeissi Letterによる)。DeepSeekはプラットフォーム全体の週次トークンの17.6%を占め、米国の主要モデル提供企業をいずれも上回っている。

この傾向は開発者向け統計にとどまらず、大手米企業のサービス内部にも及んでいる。AirbnbはAIカスタマーサービスにAlibabaのQwenを多用し、Brian Chesky CEOは「非常に優秀で、速く、安い」と評価。同サービス導入後の平均解決時間は約3時間から6秒に短縮したとされる。DoorDashはコードレビューのうち比較的軽い処理をMoonshot AIのKimi K2.6に振り分け、CoinbaseはAIコスト支出を約半減させながらGLM 5.2やKimi 2.7への切り替え実験を進めているという。

AIコーディングツールのCursorも、2026年3月に発表した「Composer 2」でKimi K2.5をベースモデルに採用していたことが、公開後24時間以内にAPI通信から発覚した。同社は当初の非開示を誤りと認め、5月の後継版「Composer 2.5」では同モデルの採用を最初から公表した。価格はClaude Opus 4.7の約10分の1とされる。

コーディング性能ランキング「Code Arena: Fullstack」では上位20モデルのうち8つを中国発が占め、首位はMoonshot AIのKimi K3(Max)。同モデルのAPI利用料はClaude Fable 5の約3割に相当するとされる。ただしこの順位は同ランキング固有のもので、別の指標では順位が異なることに留意が必要と原文は指摘している。

原典ハイライト

ITmedia AI+(Deep Insider Brief)が、CNBC・The Kobeissi Letter・OpenRouter・各社公式ブログ等の複数一次情報を統合して分析。「米企業のOpenRouter経由トークンの58%が中国モデル」「DeepSeekがプラットフォーム全体シェア首位」「Airbnb・DoorDash・Coinbase・Cursorでの実採用事例」「Ollama社によるKimi K3の米欧ホスティング・データ非保持の明示」など、具体的なデータと企業事例を列挙した上で、データ安全性の論点は「モデルの国籍」ではなく「実行主体と実行場所」にあると整理している。

出典: ITmedia AI+(報道)

So What?(なぜ重要か)

中国発AIモデルは「選んで使うもの」から、利用者が意識しないサービスの「内部部品」へと移行している。コストと性能の両面で優位性が確立しつつある中、企業の調達判断が変化し始めた段階から、米議会による調査が始まっている。日本においても、使っているSaaSや外部APIの裏側で中国モデルが動いている可能性は既に存在する。重要なのは「中国モデルを使うか否か」という二択ではなく、データが「誰によって」「どの国で」「どう処理されるか」を契約・運用レベルで把握することだ。

日本企業への示唆

日本企業が今すぐ取り組むべき実務上のポイントは三つある。第一に、利用中のSaaS・API・AIエージェントについて「裏側で動くモデルと実行環境」の開示を契約または運用ポリシーで求める。Ollamaが「米欧ホスティング・データ非保持」を明示したように、開示を求めること自体が現実的な手段になっている。第二に、個人情報・機密情報を含む入力データが「どの事業者のサーバを通るか」を確認する。オープンウェイトモデルであっても、中継サービス経由では推論プロバイダが複数存在し得る。第三に、タスク種別ごとにモデルを使い分けるティア設計を検討する——機密性の高い処理は環境を固定し、汎用タスクはコスト効率の高いモデルを活用するという構成は、DoorDashやCoinbaseの事例が示す通り既に実用段階にある。セキュリティとコスト効率の「板挟み」は、二者択一ではなく設計で解決できる問題として捉えるべきだ。

背景・経緯

DeepSeekが2024年末に高性能・低コストモデルをオープンウェイトで公開して以降、中国発モデルの存在感が急拡大した。米国では輸出規制や安全保障上の懸念から中国AI技術への警戒論があるが、原文によれば米下院の中国特別委員会と国土安全保障委員会は2026年4月にAirbnbとCursor開発元Anysphereに書簡を送付、7月末にはDoorDashにも資料提出と対面説明を要求した。一方で、OpenAIやAnthropicなど米国勢もデータ保持ポリシーの見直しを続けており、どこにデータを置くかという問いはAI業界全体の課題になっていると原文は指摘している。