公開:2026年10月12日, 最終更新:2026年10月12日
30秒サマリー
- Microsoftが構造化された意思決定・分類タスク専用モデル「Microsoft-Decision-1」をMicrosoft FoundryとOpenRouterで提供開始した。
- 36ベンチマーク・約15万問での比較でトップ精度を達成し、GPT-6 Solの約35倍の速度を実現したとしている。
- 入力トークン単価は100万トークンあたり0.042ドルで出力は無料。XBOX Research等の社内活用でもLLM比で大幅なコスト・速度改善を確認している。
何が起きたか
Microsoftは2026年10月9日、同社公式ブログ「Command Line」にて、意思決定・分類タスク向けに特化した新AIモデル「Microsoft-Decision-1」の提供開始を発表した。Microsoft FoundryおよびOpenRouterを通じて開発者がすぐに利用できるとしている。
同モデルはQwen3.5-9Bをベースにポストトレーニングを施したもので、ルーティング、分類、優先順位付け、検証、ワークフロー制御といったタスクを対象とする。LLMのように自由なテキストを生成するのではなく、固定された選択肢に対してキャリブレーションされた確率スコアを返す仕組みで、はい/いいえ・多肢選択・評点付け・ルーブリックによるAI応答評価に対応した構造化APIを提供する。
性能面では、学習データから遮蔽された36のベンチマーク・約15万問の評価で最高精度を達成し、レイテンシはGPT-6 Solの約35倍、次点のH2O-Lightning-4B v1.1の約2.5倍の速さだったとしている。ロバスト性については同一リクエストを8通りに変形した際に判定が変わる割合は平均1.3%にとどまり、選択肢の記述変更や並び替えではゼロだったと報告している。安全性については5,250件・11ベンチマークでの評価で有害なリクエストを拒否しつつ高い実用性を維持したとしている。
社内活用事例として、XBOX Researchがゲームレビュー等1万件超の分類にGPT-6 Sol比で14倍以上高速・200倍安価に活用したこと、Copilotチームの品質評価でGPT5.6 Luna比100倍の速度を確認したこと、Microsoft Discoveryの科学探索エージェントでLLMベースより46倍高い一貫性と3倍の速度を達成したことなどが紹介されている。価格は入力トークン100万あたり0.042ドル、出力は無料。
原典ハイライト
Microsoftが「Decision-1」は36ベンチマーク・約15万問でトップ精度を達成し、GPT-6 Sol比35倍の速度、入力$0.042/Mトークン(出力無料)で提供すると公表。XBOX Researchの社内検証ではGPT-6 Sol比「200倍安価」との結果も報告している。
So What?(なぜ重要か)
LLMが「考える」モデルだとすれば、Decision-1は「判断する」モデルとして異なる役割を担う。エージェントが連続的に判断を下す際、各ステップのレイテンシとコストがボトルネックになりやすいが、Decision-1のような専用モデルを組み込むことでスループットと経済性を両立できる可能性がある。LLM一本で処理していたルーティングや品質評価を専用モデルに切り出す「モデル分業」の流れが本格化する兆しといえる。
日本企業への示唆
AIエージェント導入を検討・推進している日本企業にとって、コストとレイテンシは実運用上の最大障壁の一つ。Decision-1のような軽量決定モデルを、LLMの前段ルーター・品質ゲート・インシデント分類などに組み込むアーキテクチャを設計段階から検討することで、総推論コストを大幅に削減できる可能性がある。Microsoft Foundry経由で利用可能なため、Azure環境を既に利用している企業はPoC参入障壁が低い。一方、Qwen3.5-9Bベースという点はデータ取り扱いポリシーやコンプライアンス審査の対象になりうるため、導入前に社内ガバナンス部門との確認が必要。
背景・経緯
原文によれば、「意思決定モデル」はLLMとは別の新カテゴリーとして急速に注目を集めているという認識が背景にある。エージェントAIの普及に伴い、連続する判断ステップごとのコスト・遅延が課題となっており、汎用LLMをすべてのステップに使うアプローチの非効率さが顕在化してきているとみられる。Microsoftは今後、同モデルのベースをMAIやOpenAIのモデルにも拡張する予定だと述べている。





