公開:2026年10月20日, 最終更新:2026年10月20日
OpenAIは2026年10月19日、COBOL・Fortran・Visual Basicなどの「低リソースプログラミング言語」におけるコーディング・マイグレーション能力を評価した結果を公式ブログで公表した。最新モデルは前世代モデルに比べ精度・コスト効率の両面で大きく改善したと報告している。
30秒サマリー
- OpenAIの最新モデルがCOBOL・Fortran・Visual Basicなど低リソース言語のコーディング精度を前世代から大幅に向上
- GPT‑6 AstraはSQLite互換エンジンを20言語で構築するMultiLangBenchで平均87.4%の正答率(GPT‑5.6 Solは26.8%)
- COBOL→他言語マイグレーション評価でGPT‑6.1 Solは低推論設定で86.6%・高推論設定で97.9%の精度を達成
GPT‑6 Astra・GPT‑6.1 SolのCOBOL/低リソース言語評価結果
OpenAIは2026年10月19日付の公式ブログで、低リソースプログラミング言語(COBOL・Fortran・OCaml・Visual Basicなど)向けのコーディング能力評価結果を公開した。同社によれば、これらの言語はPythonやJavaScriptと比べて学習データとなるコード・ドキュメントが少ないにもかかわらず、世界の重要インフラを支えている。COBOLはオンラインバンキングシステムの40%以上、対面クレジットカード決済の80%、ATM取引の95%を支えており、Fortranは気象予測や原子炉安全解析にも用いられているとOpenAIは述べている。
OpenAIは進捗計測のために2つの評価を開発した。「MultiLangBench」は20の言語でSQLite互換データベースエンジンをゼロから実装できるかをテストする評価で、最大推論設定におけるGPT‑6 Astraの平均正答率は87.4%。前世代のGPT‑5.6 Solの26.8%から大幅に向上し、COBOL(10.9%→72.1%)・OCaml(25.6%→85.8%)・Fortran(21.4%→83.5%)・Visual Basic(27.5%→89.4%)を含む全20言語で改善が確認された。低コストオプションのGPT‑6 Lunaは平均40.3%の正答率で、APIコストはGPT‑5.6 Solの推定78%減(サンプルあたり約0.77ドル、GPT‑5.6 Solは3.48ドル)を実現したとしている。
もう一つの「COBOLマイグレーション評価」は、COBOLプログラムをC++・Java・Kotlin・Python・Rustのいずれかに移植し、元のプログラムの動作をバイト単位で再現できるかをテストする。GPT‑6.1 Solは低推論設定で86.6%(GPT‑5.6 Solは5.4%)、高推論設定では97.9%の精度を達成し、APIコストはGPT‑5.6 Sol比で39%低減したと報告している。同社は、実運用システムへの適用には専門家によるレビューと業務ルール・依存関係に対するテストが引き続き必要だと明記している。
OpenAIはMultiLangBenchの評価セットとテストスイートをGitHubで公開しており、開発者が各言語の性能を確認したり、自社業務に関わるギャップを特定したりできるとしている。
GPT‑6 Astraの主な正答率・精度
- GPT‑6 Astra MultiLangBench平均正答率(最大推論):87.4%(GPT‑5.6 Sol比: 26.8%から向上)
- GPT‑6 Astra COBOL正答率:72.1%(GPT‑5.6 Sol: 10.9%)
- GPT‑6 Astra OCaml正答率:85.8%(GPT‑5.6 Sol: 25.6%)
- GPT‑6 Astra Fortran正答率:83.5%(GPT‑5.6 Sol: 21.4%)
- GPT‑6 Astra Visual Basic正答率:89.4%(GPT‑5.6 Sol: 27.5%)
- GPT‑6 Luna MultiLangBench平均正答率(最大推論):40.3%、推定APIコストはGPT‑5.6 Sol比約78%減(サンプルあたり約$0.77)
- GPT‑6.1 Sol COBOLマイグレーション精度(低推論):86.6%(GPT‑5.6 Sol: 5.4%)、APIコストGPT‑5.6 Sol比39%減
- GPT‑6.1 Sol COBOLマイグレーション精度(高推論):97.9%
出典: OpenAI News/Research(公式ブログ)
なぜ重要か(編集部の分析)
編集部の見方では、低リソース言語対応の精度向上は単なるベンチマーク改善にとどまらない。COBOLが金融インフラの中枢を担い続ける現状において、AIによるマイグレーション支援の実用水準が一段階引き上げられたことを意味する。特にCOBOLマイグレーション評価での97.9%(高推論)という数値は、従来「人間の専門家に依存」とされてきた領域にAIが実用的に踏み込める可能性を示す。ただし同社自身が「本番適用には専門家レビューが必要」と明記しており、全自動移行を前提とした過信には注意が必要だ。
日本企業への示唆(編集部の分析)
編集部の分析では、日本の金融機関・製造業・官公庁において、COBOLや汎用機上の基幹システムを抱える企業にとって示唆は大きい。「原開発者不在」「ドキュメント不備」という現場の課題に対し、AIによるコード理解・移植支援が選択肢として本格的に浮上しつつある。現時点では専門家の監督が前提だが、今後のモデル改善次第ではマイグレーションコストの大幅な削減が見込める。自社のシステム棚卸しとAI活用のPoC(概念実証)計画を早期に立案しておくことが、レガシー刷新の競争優位につながるとみられる。
背景・経緯
COBOLは1960年代に設計された言語であり、現在も世界の金融・行政インフラの根幹を担っている。原文によれば、企業がこれらのシステムを保守・刷新する際の課題として、ドキュメントの不備・原開発者の不在・業務ルールがコードにのみ存在するという状況が挙げられている。OpenAIは開発者・エンタープライズ顧客からのフィードバックを踏まえ、低リソース言語への対応強化を進めてきたと説明している。
GPT‑6 Astraについてよくある質問
Q. GPT‑6 AstraはCOBOLのコーディングでどの程度の精度を達成しているか?
A. MultiLangBench評価(最大推論設定)において、GPT‑6 AstraのCOBOL正答率は72.1%。前世代のGPT‑5.6 Solの10.9%から大幅に向上しており、20言語中では最も難しい言語として残っている。
Q. GPT‑6.1 SolのCOBOLマイグレーション評価の精度はどの程度か?
A. 低推論設定で86.6%、高推論設定では97.9%の精度を達成した。APIコストはGPT‑5.6 Sol比で39%低減している。ただしOpenAIは、本番システムへの適用には専門家によるレビューと業務ルールに対するテストが必要と明記している。
Q. MultiLangBenchとはどのような評価か?
A. MultiLangBenchはOpenAIが開発した評価で、モデルが20の異なるプログラミング言語でSQLite互換データベースエンジンをゼロから実装できるかをテストする。評価セットとテストスイートはGitHubで公開されている。





