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COBOLレガシー刷新にAIは使えるか——OpenAIとAnthropicの挑戦と専門家の懸念

公開:2026年10月27日, 最終更新:2026年10月27日

OpenAIは10月19日、COBOLなどレガシー言語で書かれたソフトウェアを現代的な言語へ移行する自社AIモデルの能力について「大幅な改善」があったと発表した。ただし複数の研究者はThe Vergeの取材に対し、現時点ではAIが基幹レガシーシステムの安全な置き換えに貢献できる段階にはほど遠いと警告している。

30秒サマリー

  • OpenAIが10月19日、COBOLコードを現代言語へ移行するAIモデルの性能向上を発表。最新モデルGPT-6.1 Solで最大98%の動作保持精度を達成したと報告。
  • AnthropicもClaude Codeを使ったCOBOL近代化プレイブックを今年2月に公開しており、大手AIベンダーが相次いでレガシー移行市場に照準を合わせている。
  • 専門家4人はいずれも、コードの書き換えはシステム刷新の一部にすぎず、データ形式・他システムとの連携・テスト手法など未解決の課題が山積していると指摘している。

COBOLレガシー移行に向けたOpenAI・Anthropicの取り組みと専門家の評価

OpenAIは10月19日付のブログで、レガシーコードを現代言語(C++、Java、Kotlin、Python、Rust)へ移行する際の動作保持精度に関するテスト結果を公表した。最新モデルのGPT-6.1 Solは、低推論負荷で87%、高推論負荷で98%の動作保持精度を達成したとしている。同社は同ブログで「移行が成功とみなされるのは、すべてのテストが通過した場合のみ」と明記している。OpenAIのスポークスパーソンはThe Vergeへの電子メールで、レガシーコードは「まだ解決された問題とはほど遠い」と認めた。

Anthropicは今年2月、COBOLコードをJavaやPythonなどへ移行するための「コード近代化プレイブック」を公開し、自社のコーディングエージェントClaude Codeを活用策として提案した。同社は具体的な性能ベンチマークは示さなかったが、「COBOLの近代化における経済性は変化した」と主張。この発表を受け、レガシーシステムの保守支援を収益源の一つとするIBMの株価は急落したと報じられている。

専門家の見方は慎重だ。オランダ・トウェンテ大学のVadim Zaytsev准教授は「コードの書き換えはシステムの置き換えとは別物」と強調し、「現時点でAIはCOBOLレガシーシステムの置き換えや移行において大きな役割を果たしていない」と述べた。同教授は自身が見た最大のシステムで2億5000万行のCOBOLが存在したと言及している。オランダ・デルフト工科大学のArie van Deursen教授はOpenAIのブログを「表面的」と評し、同社の評価に用いたタスクが実際の近代化とは「光年単位で離れている」と指摘した。インペリアル・カレッジ・ロンドンのAlastair Donaldson教授は堅牢なテストの重要性を強調し、南デンマーク大学のJacopo Mauro教授は数学的手法による形式検証が有望な手段の一つだが「膨大な作業量が必要」と述べた上で、「それまでは人間による検証が不可欠だ」と結論付けた。

出典: The Verge(報道)

なぜ重要か(編集部の分析)

編集部の見方では、OpenAIとAnthropicの参入はCOBOL移行市場の「経済性」を変える可能性を示唆しているが、専門家の指摘が明確にするように、コード変換の精度向上はシステム刷新という課題の一部にすぎない。データ移行、他システムとの統合、網羅的なテスト設計という難題が残る以上、AIはあくまで「人間の検証を前提とした補助ツール」として位置付けるのが現時点では妥当と考えられる。IBMのような既存の保守ベンダーにとっては事業モデルへの圧力が高まる一方、移行プロジェクトを手掛けるシステムインテグレーターには新たな商機となりうる。

日本企業への示唆(編集部の分析)

編集部の分析では、日本企業にとってこの動向はレガシーシステム刷新の議論を加速させる契機となりうる。国内でも基幹系システムの老朽化と担い手不足は深刻であり、COBOLを中心とするメインフレーム依存の企業はAIツールの実力と限界を冷静に評価すべき段階に入った。ただし専門家が警告するように「99%を自動化できる魔法の杖があっても、残り1%が数百万行になりうる」というリスクは現実的だ。実務的には、まず規模の小さな非基幹システムでAI移行ツールの試験導入を行い、テスト設計・形式検証を含む検証体制を先に構築することが、プロジェクト失敗リスクを抑える現実的なアプローチといえる。

背景・経緯

COBOLは1959年に誕生した業務向けプログラミング言語で、IBM調べではオンラインバンキングシステムの40%超の基盤となっているほか、政府系システムにも広く組み込まれている。数十年にわたって後継言語への移行が試みられてきたが、システムの重要性、既存エンジニアの高齢化・引退、膨大なコード規模などにより移行は進んでいない。Fortranをはじめとする他のレガシー言語も科学計算や核安全関連システムで現役であり、問題はCOBOLに限定されない。

COBOLについてよくある質問

Q. OpenAIのAIモデルはCOBOL移行でどの程度の精度を達成しているか?

A. OpenAI自身のテストでは、最新モデルGPT-6.1 Solが高推論負荷の条件下で98%の動作保持精度を記録した。ただし同社は「レガシーコードはまだ解決された問題とはほど遠い」とも認めている。

Q. AnthropicのClaude CodeはCOBOL移行に使えるか?

A. Anthropicは今年2月にCOBOL近代化向けのプレイブックを公開し、Claude CodeをJavaやPythonへの移行ツールとして提案している。ただし具体的な性能ベンチマークは公表されていない。

Q. COBOLシステムのAI移行において専門家が指摘する最大の課題は何か?

A. 複数の研究者は、コードの書き換えはシステム刷新の一側面にすぎないと指摘する。データ形式の多様性、他システムとの技術的統合、網羅的なテスト設計が未解決の課題であり、わずかな動作差異も許容されない基幹システムでは人間による検証が依然として不可欠だとしている。

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