公開:2026年10月29日, 最終更新:2026年10月29日
NVIDIAは2026年10月28日、多言語音声認識・話者分離・翻訳・音声Q&Aを1つのチェックポイントで処理できるオープンウェイトモデル「NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribe」をHugging FaceおよびModelScopeで公開した。あわせて、学習データの公開キュレーションパイプライン「Granary v2」も提供される。
30秒サマリー
- NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeは40言語の文字起こし・31言語の翻訳・13言語の話者分離を1モデルで実行できるオープンウェイトASRモデル。
- Hugging Face Open ASR Leaderboard(英語)でオープンウェイトモデル1位(WER 5.33%)、David AIの21言語話者分離ベンチマークでも全14システム中最低エラー率を記録。
- 学習データパイプライン「Granary v2」は48言語・463,062時間のマニフェストを公開し、ファインチューニングで医療領域の単語誤り率を最良プロンプト比で相対45.8%削減した事例も紹介。
NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeの主要機能とベンチマーク結果
NVIDIAが2026年10月28日に公式ブログで発表したNVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeは、40言語の文字起こし、31言語の英語相互翻訳、13言語の話者分離(ダイアライゼーション)、および英語での音声Q&Aを単一チェックポイントで処理するオープンウェイトモデルだ。最大1時間の録音を扱い、最大8話者のラベル付けに対応する。自然言語プロンプトで出力形式を制御でき、「各話者をラベル付けして文字起こしせよ」「この音声を英語に翻訳せよ」「この会議でどんな決定がなされたか」といった指示を受け付ける。単語レベルのタイムスタンプも利用可能だ。
ベンチマーク性能については、Hugging Face Open ASR Leaderboardの英語トラックでオープンウェイトモデル1位となるWER 5.33%を達成。多言語トラックでは7言語平均4.62%、長文トラックでは10.98%のWERを記録し、いずれもモデルカード記載のオープンウェイト比較で最低値だとしている。Artificial Analysis Speech-to-Text LeaderboardではAA-WER 2.8%でオープンウェイトモデル最上位に並び、アクティブパラメータ数は約4B(全体30B、うちトークンごとに約4Bが有効)。David AIの21言語ダイアライゼーションリーダーボードではDER 18.26%で全14システム中最低エラー率を達成し、VoiceArenaの14システム比較でもcpWER 32.4%で首位となっている。
モデルは現在vLLMで提供可能なチェックポイントとして利用でき、量子化バージョンは近日公開予定。量子化版のNVFP4精度でのベンチマークでは、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU 1枚を使用し、30秒クリップの高並列処理で100時間分の音声を3分未満で処理したと原文に記載されている。Jetson AGX Thor、DGX Spark、Blackwellデータセンターグレードのエッジからクラウドまでの展開を想定しているが、ライブストリーミングには対応しておらず録音済み音声向けと原文は明記している。
訓練データパイプライン「Granary v2」は48言語・463,062時間をカバーする16コーパスのマニフェストをHugging FaceとModelScopeで公開しており、Granary v1の25言語から拡張された。医療領域での事例として、ファインチューニングにより最良プロンプトと比較してホールドアウト話者のWERを相対45.8%削減できたとしている。また、Agoraは単語レベルのタイムスタンプを活用し、録音された授業の映像リプレイと字幕を同期表示するデモを構築したことも原文で紹介されている。
NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeの主な仕様・数値
- 対応言語(文字起こし):40言語
- 対応言語(翻訳・英語相互):31言語
- 対応言語(話者分離):13言語
- 最大録音長:1時間
- 最大話者数:8名
- 英語WER(Hugging Face Open ASR Leaderboard):5.33%(オープンウェイトモデル1位)
- AA-WER(Artificial Analysis):2.8%(オープンウェイトモデル同率1位)
- アクティブパラメータ数:約4B(全体30B中)
出典: Hugging Face Blog(公式ブログ)
なぜ重要か(編集部の分析)
編集部の見方として、文字起こし・話者分離・翻訳・音声Q&Aを1モデルで統合し自然言語プロンプトで制御できる点は、コールセンター分析・医療記録・多国語会議など複数の業務用途に単一インフラで対応できることを意味する。加えてモデルウェイトとデータパイプラインの両方がオープンで公開されているため、企業は自社データでのドメイン適応が可能であり、クローズドなAPIサービスへの依存を回避できる選択肢が生まれる。
日本企業への示唆(編集部の分析)
編集部の分析として、日本企業への示唆は主に二点ある。第一に、40言語対応かつ話者分離・翻訳を単一モデルで処理できる構成は、グローバル展開中の企業が複数ベンダーのAPIを組み合わせていたコストと管理負荷を削減しうる。第二に、Granary v2とNeMo Speechファインチューニングの活用により医療・法務・製造など専門用語が多い分野でのカスタマイズが可能であり、アクティブパラメータ約4Bという軽量設計はオンプレミスGPUやエッジデバイスへの導入余地も示している。量子化版の公開動向と、日本語の具体的な対応状況(モデルカードのタスク×言語マトリクス)を確認したうえで導入評価を進めることが現実的な次の一手となる。
背景・経緯
NVIDIAはNeMoフレームワークを中心に音声AIモデルの研究開発を継続しており、本モデルに先行してNemotron 3 Diarizationをリリースしている。Granary v1は25言語対応だったが、今回のv2で48言語・463,062時間規模に拡張された。Hugging FaceのOpen ASR LeaderboardやArtificial Analysis、David AI、VoiceArenaなど複数の独立ベンチマークでの評価結果が原文に示されている。
NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeについてよくある質問
Q. NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeはどこで入手できますか?
A. NVIDIA Nemotron 3.5 TranscribeはHugging FaceおよびModelScopeで公開されており、現時点ではvLLMで利用可能なチェックポイントとして提供されている。量子化バージョンは近日公開予定と原文に記載されている。
Q. NVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeのプロンプト制御とはどのような機能ですか?
A. 自然言語で指示を与えることで、話者ラベル付き文字起こし・英語翻訳・会議の意思決定抽出など異なる出力を同一モデルから得られる。ドメイン固有の用語をプロンプトにヒントとして含めることで、ファインチューニング前でも認識精度の向上が期待できると原文は説明している。
Q. Granary v2はNVIDIA Nemotron 3.5 Transcribeのファインチューニングにどう活用できますか?
A. Granary v2はNeMo Curatorで構築された再利用可能な4段階のデータキュレーションパイプラインを提供し、開発者は自社録音や許諾済み公開コーパスに適用できる。医療領域での事例では、ファインチューニングにより最良プロンプト比でWERを相対45.8%削減できたと原文に示されている。





