公開:2026年10月28日, 最終更新:2026年10月28日
Liquid AIは2026年10月27日、次世代Liquid Foundation Models「LFM3」をHugging Face公式ブログで発表した。テキスト・ビジョン・音声・オムニ・意思決定の6モデルを2Bパラメータクラスの単一バックボーン上に統合し、シングルGPUでのファインチューニングとエッジ展開を可能にする設計が特徴だ。
30秒サマリー
- LFM3は2Bクラスの共通バックボーン「LFM3-1.7B-Base」から派生する6モデルで構成され、テキスト・画像・動画・音声を網羅する
- 新アーキテクチャ(tri-hybrid)により前世代LFM2.5-2.6Bを35%少ないパラメータで上回る性能を実現
- 4ビット量子化で約1GBに収まりシングルGPUでファインチューニング可能、エッジ・オンデバイス展開を想定した設計
LFM3の発表内容とアーキテクチャ・モデル構成の要点
Liquid AIは2026年10月27日付のHugging Face公式ブログで、新世代モデルファミリー「LFM3」の詳細を公開した。LFM3は「LFM3-1.7B-Base」を共通バックボーンとして、テキスト(LFM3-1.7B)、ビジョン(LFM3-VL-2B)、音声(LFM3-Audio-2B)、オムニ(LFM3-Omni-2B)、意思決定(d1-2B・d1-omni-2B)の計6モデルを展開する。前世代LFM2.5-2.6Bと比べ35%少ないパラメータで高い性能を達成するとしており、エージェントタスクを重視した設計となっている。
アーキテクチャ面では「tri-hybrid」と呼ぶ新構造を採用。24層のうち13層がゲート付きショートコンボリューション、5層がスライディングウィンドウアテンション(256トークンウィンドウ)、6層がグローバルアテンションで構成される。さらにhead-wise gated attention、Partial RoPE、Sandwich normの3つの工夫を加え、量子化耐性と長文脈推論速度を改善している。コンテキストウィンドウは256Kトークンに対応する。
LFM3-1.7B-Baseは22兆トークンで事前学習され、最終3.5兆トークンはエージェントトレースやツール呼び出しを多く含むデータによるmid-trainingステージとなっている。テキストモデルは4ビット精度で約1GBに収まるとされ、スマートフォンからRaspberry Pi 5、クラウドGPUまで14種類のデバイス・バックエンドを対象にアーキテクチャサーチが実施されている。
ビジョンモデルLFM3-VL-2BはLFMシリーズ初の動画入力に対応し、62の視覚ベンチマーク平均スコアが前世代LFM2.5-VL-3Bの57.6から71.4に向上、6倍以上大きいGemma 4 12Bと同等と説明されている。音声モデルLFM3-Audio-2Bは18言語対応で音声認識・合成・翻訳をサポートし、新開発の音声コーデック「LiquidCodec」はApple M4 Max上のシングルCPUスレッドで約87倍リアルタイム速度での音声生成を実現するという。各モデルはHugging Faceのtransformersライブラリで動作し、サンプルコードがブログ内に掲載されている。
LFM3の主な仕様・数値
- パラメータ数(ベースモデル):1.7B
- モデルファミリーのクラス:2Bクラス(全6モデル)
- 事前学習トークン数:22兆トークン(うちmid-training 3.5兆トークン)
- コンテキストウィンドウ:256Kトークン
- 4ビット量子化時のサイズ(テキストモデル):約1GB
- 対応言語(音声モデル):18言語
- 音声生成速度(LiquidCodec、Apple M4 Max):約87倍リアルタイム(シングルCPUスレッド)
- アーキテクチャサーチ対象デバイス数:14種類(スマートフォン・Raspberry Pi 5・ラップトップ・クラウドCPU/GPU・Qualcomm Hexagon NPU等)
出典: Hugging Face Blog(公式ブログ)
なぜ重要か(編集部の分析)
編集部の見方:LFM3が示す最大の意義は「モダリティ別に選べる共通バックボーン」という設計思想にある。従来は用途ごとに異なるモデルを調達・管理する必要があったが、同一バックボーンから派生する6モデルを統一した手順でファインチューニング・展開できる体制は、運用コストと技術的負債を大幅に削減しうる。さらに4ビット量子化で約1GBに収まるテキストモデルは、クラウド依存なしにオンデバイスエージェントを実現する閾値を大きく引き下げ、プライバシー制約が厳しい産業領域での活用を後押しする可能性がある。
日本企業への示唆(編集部の分析)
編集部の見方:日本企業にとって特に注目すべきは、製造・医療・金融など専門ドメインへの適用コストの低下だ。シングルGPUでファインチューニングできる点は、大規模GPU投資が難しい中堅企業でも自社データでの特化モデル構築が現実的になることを意味する。音声18言語対応と低遅延(初回トークン50ms)は、コールセンターや多言語カスタマーサポートへの組み込みを検討する際の技術的障壁を下げる。一方、モデルの内部アーキテクチャや性能主張は自社ベンチマークによるものが多いため、実業務への適用前に社内環境での独自評価を行うことが望ましい。
背景・経緯
Liquid AIはMITを起源とする研究発のAIスタートアップで、トランスフォーマー以外のアーキテクチャ(液体神経回路に着想を得たハイブリッド構造)を商用モデルに採用してきた。LFM3は前世代のLFM2およびLFM2.5ファミリーに続く新世代であり、エッジ推論とエージェント用途への対応強化が主な開発動機とブログは説明している。
LFM3についてよくある質問
Q. LFM3のモデルはどのように入手・実行できるか
A. LFM3の各モデルはHugging Face Hub上で公開されており、Hugging FaceのtransformersライブラリをインストールすることでPythonから実行できる。各モデルカードに対応する推論エンジンの詳細が記載されている。
Q. LFM3はシングルGPUでファインチューニングできるか
A. ブログによれば、LFM3ファミリーの全モデルはシングルGPUでファインチューニング可能な設計になっており、自社データや専門用語への適応が可能とされている。
Q. LFM3-VL-2Bの視覚性能はどの程度か
A. ブログによれば、LFM3-VL-2Bは62の視覚ベンチマーク平均スコアで71.4を記録し、前世代LFM2.5-VL-3Bの57.6から向上、パラメータ数が6倍以上のGemma 4 12Bと同等の水準とされている。








