公開:2026年10月28日, 最終更新:2026年10月28日
ブロードバンドタワーとNTT東日本は2026年10月27日、次世代通信基盤「IOWN APN」を活用し、東京都大手町と北海道札幌市のデータセンター間(1,000km超)をつないだストレージ統合の共同実証に成功したと発表した。遠隔拠点からの大容量ファイル読み出し速度の低下は約3%にとどまり、同一拠点内と概ね同等の性能を確認した。
30秒サマリー
- IOWN APNの100Gbps回線で東京〜北海道間1,000km超のストレージを統合し、読み出し性能低下が約3%に収まることを実証
- 遅延片道7.14ms・ゆらぎ16ns未満という低遅延・低ジッター通信により、同一拠点と同等の性能でAIワークロードや映像処理が可能に
- ランサムウェア対策の監視サーバを1拠点に集約し、遠隔拠点の検知・防御も正常に機能することを確認
IOWN APN活用による東京〜北海道間ストレージ統合実証の概要
ブロードバンドタワーとNTT東日本は、ブロードバンドタワーの新大手町サイト(東京都大手町)とNTT東日本の札幌東局(北海道札幌市)を「All-Photonics Connect powered by IOWN」の100Gbps回線で接続し、両拠点にDell PowerScale F200を各3台構成したストレージバックエンドネットワークを構築して実証を実施した。
実証の結果、東京〜北海道間の実証回線における遅延は片道7.14ms、ゆらぎは16ns未満を達成。遠隔拠点からの大容量ファイル読み出しでは、同一拠点構成時との時間差が1秒未満にとどまり、読み出し速度の低下は約3%だったと報告している。ストレージはネットワークの遅延やゆらぎの影響を受けやすく、従来は隣接ラックへの設置が基本とされていたが、IOWN APNの特性がこの制約を打破した形だ。
ランサムウェア対策についても、監視ソフト「Superna Eyeglass」を搭載した監視サーバを1拠点に集約した構成で、東京・北海道双方のストレージへの疑似攻撃を正常に検知・防御できることを確認した。
両社は今後、本実証の知見をもとにストレージシステムの地方分散展開を検討するとしている。ブロードバンドタワーが2026年9月14日に運用を開始した北海道石狩市の「石狩新港サイト」は再生可能エネルギー100%で運営するデータセンターであり、IOWN APNで新大手町サイトと接続して活用する計画があるとしている。
IOWN APN活用による東京〜北海道間ストレージ統合実証の主な仕様・数値
- 接続区間:東京都大手町(ブロードバンドタワー新大手町サイト)〜北海道札幌市(NTT東日本 札幌東局)、1,000km超
- 使用回線:All-Photonics Connect powered by IOWN(100Gbps回線)
- ストレージ機器:Dell PowerScale F200 × 各拠点3台構成
- ランサムウェア対策ソフト:Superna Eyeglass
- 実証回線の遅延(片道):7.14ms
- 実証回線のゆらぎ:16ns未満
- 読み出し速度低下:約3%(同一拠点構成比)
- 同一拠点との読み出し時間差:1秒未満
出典: NTT東日本(ニュースリリース)(国内一次)
なぜ重要か(編集部の分析)
編集部の見方では、本実証の意義は「距離の壁」をデータインフラから取り除いた点にある。従来、ストレージは遅延・ジッターへの敏感さから物理的に近くに置く必要があり、これがデータセンターの東京集中を加速させる一因だった。IOWN APNが低遅延・低ジッターを1,000km超で実用水準に収めたことで、地方の安価な電力・用地・再生可能エネルギーを活用しながら首都圏のAIワークロードを賄うアーキテクチャの実現可能性が技術的に示された。
日本企業への示唆(編集部の分析)
編集部の分析では、日本企業への示唆は大きく二つある。第一に、データセンターコスト削減とBCP(事業継続計画)強化の両立を検討している企業にとって、地方拠点へのストレージ分散が現実的な選択肢になり得る。第二に、AI学習・推論基盤の構築を計画している企業は、首都圏のGPUサーバと地方の学習データを高速接続する構成を前提に、インフラ設計を見直す余地がある。ただし、現時点でIOWN APNの商用提供エリアや料金体系を自社の要件と照合する確認が必要だ。
背景・経緯
NTT東日本は2023年3月にAPN IOWN1.0の提供を開始し、2024年12月には最大800Gbpsの「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供を開始している。データセンターの地方分散は、東日本大震災以降の東京一極集中リスクへの対応や地方創生、再生可能エネルギーの活用といった政策的要請を背景に議論が続いてきた。一方、高遅延・高ジッターという通信品質の制約がストレージの遠隔配置を阻む技術的障壁となっており、今回の実証はその克服を目指したものと位置づけられる。
IOWN APN活用による東京〜北海道間ストレージ統合実証についてよくある質問
Q. IOWN APNを使ったストレージ統合実証で、読み出し性能はどの程度低下したか?
A. 東京〜北海道間1,000km超の遠隔構成で、読み出し速度の低下は約3%にとどまった。同一拠点構成との読み出し時間差は1秒未満であり、ユーザーが体感する差は極めて小さいと評価されている。
Q. IOWN APNの実証回線における遅延とゆらぎの測定値は?
A. 東京〜北海道間の実証回線では、遅延が片道7.14ms、ゆらぎが16ns未満という結果だった。
Q. IOWN APN実証でランサムウェア対策はどのように検証されたか?
A. 監視ソフト「Superna Eyeglass」を搭載した監視サーバを1拠点に集約した構成で、東京・北海道双方のストレージへのランサムウェア疑似攻撃を正常に検知・防御できることが確認された。




